「あなたの強みは何ですか」と聞かれて、言葉に詰まる。転職の書類や面談のシートを前に、手が止まる。
人と比べると、特別にできることは何もない気がする。資格もない。好きなことを聞かれても、仕事になるほどのものは思いつかない。
でも、「才能がわからない」と「才能がない」は、同じではありません。多くの場合、才能は本人にとって当たり前すぎて、才能だと思えていないだけです。
この記事では、当たり前にしていることの中から持ち味を見つける手順と、その持ち味が力を出す条件について書きます。後半では、占術の一つである四柱推命を、持ち味を言葉にするための道具として使う方法も紹介します。
先に結論
才能は、「疲れないのに続いていること」に出る
- 当たり前にしていること
- 頑張っている場面ではなく、気づけば続けていること、人によく頼まれることを書き出す。
- 周りの言葉
- 「よくそんなことができるね」と言われたことは、自分では当たり前になっている持ち味の手がかり。
- 力が出る条件
- 同じ持ち味でも、任され方・進め方・決め方しだいで、強みにもなれば、疲れの原因にもなる。
「得意」と「才能」は、少し違う
得意なことは、練習や経験で身につけた技能です。資料づくり、数字の管理、人前で話すこと。時間をかけて身につけたぶん、自分でも「これはできる」と分かっています。
好きなことは、気持ちが向くことです。好きだから続けられる一方で、気分や体調によって波があります。
才能は、そのどちらとも少し違います。努力しなくても自然に出てしまう、動き方や反応のくせのようなものです。
たとえば、資料づくりが得意な人は二種類います。一人は、きれいに整える技術を身につけた人。もう一人は、作っているうちに「これを読むのは誰で、何に困っているか」を自然に考えてしまう人です。後の人の持ち味は、資料づくりという技能ではなく、「相手の立場から考えてしまう」という動き方のほうにあります。
才能が職業の名前や資格の形をしていないのは、このためです。「何ができるか」を探しても見つからないときは、「どう動いてしまうか」から探すと見つかります。
才能が、自分には見えない理由
当たり前すぎて、比べる相手がいない
自分にとって簡単なことは、ほかの人にとっても簡単だと思い込みがちです。
会議の空気が重くなりかけると、つい話題を変えてしまう人がいます。本人は「少し気を遣っただけ」と思っています。でも、周りの多くは、空気が重くなったことにさえ気づいていません。本人にとって当たり前なので、それが持ち味だと気づく機会がないのです。
「いちばんできる人」と比べてしまう
強みを探すとき、その分野でいちばんできる人と自分を比べてしまうことがあります。文章なら作家と、数字なら経理の専門家と。これでは、何を挙げても「自分なんて」で終わります。
才能は、人と比べた順位の話ではありません。自分の中で、ほかのことより楽にできること。比べる相手は、ほかの人ではなく、自分のほかの行動です。
疲れている場所で探している
いまの仕事で力が出ていないと、才能そのものがないように感じます。
でも、持ち味は、合わない条件の中で使われると、短所に見えることがあります。細かいところに気づく人が、速さだけを求められる場所では「仕事が遅い」と言われる。人の気持ちを察する人が、数字だけで評価される場所では「考えすぎ」と言われる。持ち味がないのではなく、条件と合っていないだけかもしれません。
職業の名前から探している
「自分に向いている仕事は何か」から始めると、職業の一覧の中に自分を当てはめることになります。
同じ営業でも、新しい相手を開拓すること、長く付き合う相手との関係を保つこと、提案の中身を練ること、では使う力がまったく違います。職業の名前は、才能を探すには少し大きすぎる単位です。一段細かい「動き方」で見るほうが、手がかりが見つかります。
当たり前にしていることを、書き出してみる
紙かスマートフォンのメモに、次の問いへの答えを書き出してみてください。一つの問いに三つずつ。正しい答えを探さず、思いついた順でかまいません。
- 頼まれていないのに、つい、やってしまうことは?(誤字を直す、段取りを組み直す、場を和ませる、など)
- 人からよく頼まれることは? そのうち、頼まれてもあまり負担に感じないことは?
- 時間を忘れて没頭していた場面は? 仕事以外の場面でもかまいません。
- 「なんでそんなことに気づくの」「よくそんなことができるね」と言われたことは?
- 人がやっているのを見て、もどかしくなることは?
最後の問いは、少し意外かもしれません。人のやり方にもどかしさを感じるのは、自分の中に、それを自然にこなす基準があるからです。いらだちの裏側に、持ち味が隠れていることがあります。
書き出したら、答えに共通している「動き方」を探します。
例として、「誤字を直してしまう」「会議の段取りを組み直してしまう」「人の話の食い違いに気づく」が並んだとします。三つに共通するのは、全体を見て、ずれを見つける動き方です。これが持ち味の候補になります。
一人で見つからないときは、身近な人に聞くのも手です。「私が当たり前にやっていて、あなたから見ると得意そうに見えることは何?」と、二、三人に聞いてみてください。自分で書き出したものと重なるところは、持ち味である可能性が高いところです。
同じ持ち味でも、力が出る条件は人によって違う
持ち味が見つかっても、それだけで力が出るわけではありません。持ち味には、力が出やすい条件と、出にくい条件があります。
たとえば、人の気持ちを察する持ち味。相談を受ける役割や、チームの調整役を任される場面では、強みとして光ります。一方で、決められた手順どおりに動くことだけを求められ、数字だけで評価される場所では、察したことを活かす場面がありません。むしろ、気づいてしまうぶんだけ気疲れします。
持ち味が同じでも、置かれる条件で、強みにもなれば疲れの原因にもなる。「この仕事は向いていない」と感じるときの多くは、持ち味そのものではなく、持ち味と条件の組み合わせの問題です。
力が出た場面を一つ思い出して、そのときの条件を書き出してみてください。
- 任され方:自分に任されていたか、指示どおりに動いていたか
- 進め方:一人で進めていたか、人と一緒に進めていたか
- 決め方:自分で決めていたか、あらかじめ決まっていたか
- 人との距離:相手の顔が見える距離か、見えない距離か
力が出た場面と、疲れた場面で、この条件を比べてみる。持ち味の名前が分かるより先に、自分が力を出しやすい働き方が見えてくることもあります。
占いは、持ち味を「言葉にする」道具として使う
書き出してみても、うまく言葉にならないことがあります。そういうときは、占術の分類を借りる方法があります。
四柱推命は、生まれた年・月・日(分かれば時刻も)を、干支という古い暦の記号で表して読む占術です。生まれた日の「干」を自分自身とし、ほかの干との関係を「通変星」という十の星で読みます。この十の星は、性質の近いもの同士で五つのまとまりに分けられます。
四柱推命の5つのまとまりと、仕事での現れ方
- 自分と同じ気比肩・劫財主体性・勝負強さ自分で決めて進める。人と競う場面で力が出る。
- 自分が生み出す気食神・傷官表現力・創造力考えや感じたことを形にする。伝える、作る。
- 自分が動かす気偏財・正財交渉力・管理力人や物、お金を動かす。関係を広げる、整えて保つ。
- 自分を律する気偏官・正官行動力・統率力役割を引き受け、責任を持って物事を進める。
- 自分を支える気偏印・印綬発想力・分析力学び、考え、ひらめく。物事の仕組みをつかむ。
どのまとまりが強く出ているかを見ると、自分の力が出やすい動き方の傾向が分かります。たとえば「自分を支える気」が強い人は、学んで考える時間を持てる働き方で力を出しやすく、「自分が動かす気」が強い人は、人やお金が実際に動く場面で力を出しやすい、というふうに読みます。
使い方のこつは、占いの結果を「当たっているかどうか」で判定しないことです。先に書き出した自分の持ち味と、並べて見比べます。
- 重なるところは、持ち味に名前がついたと考えて、言葉として使う
- 重ならないところは、まだ使っていない力か、いまは使いにくい条件にいる力の候補として、しばらく心に留めておく
占いは、才能を決めるものではありません。自分では見えにくいものに、名前をつけるための道具です。書き出したメモと占いの言葉を行き来すると、持ち味がだんだん自分の言葉になっていきます。
もう少し、考えてみる
書き出しても、何も出てこない
仕事の場面だけで探していると、出てこないことがあります。家のこと、趣味、友人とのやりとりの中の「つい、やってしまうこと」も、同じように持ち味の手がかりです。
小さすぎると思うことほど、候補に入れてください。「旅行の計画を立てるのはいつも自分」「グループの連絡をまとめるのはいつも自分」。当たり前すぎて書くのをためらうことに、持ち味はよく隠れています。
才能は、好きなことを仕事にしないと活かせない?
好きなことと才能は、別のものです。好きな分野の仕事でなくても、持ち味が使われる役割であれば、力は出ます。
たとえば、全体を見てずれを見つける持ち味は、経理でも、編集でも、現場の段取りでも使えます。分野を選ぶより先に、持ち味が使われる役割かどうかを見る。好きなことは、仕事の外に大切に置いておくという選び方もあります。
40代・50代からでも、才能は見つかる?
才能は、年齢とともに急に増えたり、なくなったりするものではありません。それに、経験を重ねたぶん、書き出せる場面はむしろ多くなっています。
これまで当たり前として通り過ぎてきたことを言葉にするには、材料がそろっている時期とも言えます。長く続けてきたことの中に、疲れずに続いていたことがないか、振り返ってみてください。
才能は、どこか遠くへ探しに行くものというより、すでに毎日使っているものに名前をつけることに近いのだと思います。今日、つい、やってしまったことを一つ、書き留めるところから始めてみてください。


