何も手につきません。

仕事の途中で、その人のことを考えている。考えても仕方がないのは分かっている。分かっているのに、止まらない。

「趣味に時間を使うといい」と言われます。使っています。友達にも会っています。それでも、ふとした瞬間に戻ってくる。

片思いが、辛い。

先に書きます。その辛さは、好きの量から来ているのではありません。決まらなさの量から来ています。 そして決まらなさの形は、相手との距離によって違います。

「趣味に時間を使う」が効かない理由

片思いの辛さについて調べると、ほとんどの答えが「恋愛以外のことに意識を向けましょう」で終わります。間違いではありません。ただ、それで楽にならない人がいます。

この記事の中心

辛さを大きくしているのは、「どちらにも決まっていない」ことです

好かれているとも、好かれていないとも分からない。その状態は、頭を相手の方へ引き戻し続けます。

これには手がかりになる研究があります。

2011年に発表されたアメリカの実験では、女子大学生に男子学生4人のプロフィールを見せ、「相手はあなたをとても気に入っている」「普通くらい」「どちらか分からない」のいずれかを伝えました。いちばん相手に惹かれたのは「とても気に入っている」と聞いた人ではなく、「どちらか分からない」と聞いた人でした。そして、その人たちが相手のことをいちばん長く考えていたと報告しています。

もう一つ、恋愛の研究ではありませんが、2016年のイギリスの実験があります。電気刺激が来るかどうかを予測させる課題で、本人が感じるストレスや体の反応は、来るかどうかを読み切れない度合いに沿って動いていました。

どちらも実験室での研究で、あなたの片思いをそのまま説明するものではありません。ただ、「分からない」ことが、考える時間とストレスの両方を増やす方向に働く、という手がかりにはなります。

だから、時間を別のことに使っても、「分からない」が残っている限り、頭は戻ってきます。あなたの意志が弱いからではありません。

片思いの辛さは、距離で形が変わる

  1. 遠い片思い

    ほとんど何も起きていない職場や学校で見かけるだけ、話すのは用事のときだけ。相手はあなたの気持ちを知らない。

  2. 近い片思い

    やりとりはあるのに進まない連絡は来る、たまに会う。でも関係の名前は変わらない。優しくされるたびに期待が戻る。

  3. 終わりかけの片思い

    脈がないと分かっているのに離れられない自分でも終わりだと思っている。それなのに、忘れかけた頃に連絡が来て、気持ちがぶり返す。

同じ「辛い」でも、中身が違います。遠い片思いは、何も起きないことが辛い。近い片思いは、起きては消えることが辛い。終わりかけの片思いは、終わらせられないことが辛い。

それぞれに、効く手が違います。

遠い片思い:何も起きていないのに辛い

この辛さは、想像の中で関係が進んでいくことから来ます。実際には会話が数回しかなくても、頭の中では何十回も会話をしています。

ここで効くのは、現実の情報を一つだけ増やすことです。

反応が良ければ、想像ではなく現実の手がかりが一つ増えます。反応が薄ければ、それも手がかりです。どちらに転んでも、「分からない」が少し減ります。 減った分だけ、頭の中の会話は静かになります。

何もしないまま時間を置くと、想像だけが育ちます。想像の相手は、現実の相手より都合よく優しいので、離れにくくなります。

近い片思い:やりとりはあるのに進まない

この形がいちばん消耗します。連絡が来るたびに期待が戻り、進まないたびに落ちる。 その往復が毎日起きます。

見なくていいもの

  • 返信の速さ
  • 絵文字やスタンプの数
  • 「おやすみ」が来たかどうか
  • 既読がついた時刻

見るもの

  • 相手からも話題が始まるか
  • 前に話したことを覚えているか
  • 会う話が、具体的な日付になるか
  • 数週間分を並べたとき、関係が動いているか

左を見ていると、毎日が採点になります。右は、一日単位では変わりません。数週間の単位で見ると決めるだけで、毎晩の上下は少し小さくなります。

LINEのどこを見ればいいかは、脈ありLINEの見分け方にまとめました。たまに届く反応がなぜこれほど効くのかは、好きな人に執着してしまうのは、なぜ?に仕組みを書いています。

終わりかけの片思い:終わらせられない

脈がないのは分かっている。距離も置いた。他の出会いもある。それなのに、忘れかけた頃に相手から連絡が来て、全部が戻ってくる。

この形の辛さは、区切りを相手の行動に預けていることから来ます。相手から連絡が来なくなったら終わり、と思っていると、連絡が来るたびに終わりが延びます。そして相手は、あなたの区切りを知りません。

終わりかけのときに

区切りは、相手の返事で作らない

「連絡が来なくなったら」ではなく、「私はこの日で終わりにする」と、自分の側で日付を決める。相手から連絡が来ても、その日は動かさない。

連絡が来たら返してはいけない、という話ではありません。返してもいい。ただ、返したことで区切りの日を延ばさない。それだけです。

「好き」を消そうとしなくて構いません。消えないものを消そうとすると、消えていない自分を毎日責めることになります。やめるのは、好きでいることではなく、待つことのほうです。

辛さに、名前をつける

「辛い」の中身を分けると、少し扱いやすくなります。

何も手につかない
頭の一部が、ずっと相手の返事を待つ状態で動いている。
期待と落胆の往復
小さな出来事ごとに上がって下がる。疲れているのは心より、この上下のほう。
自分の価値が下がる感じ
選ばれないことを、自分が足りないことだと読み替えている。
誰にも言えない孤独
まだ何も起きていない話を、人に説明しにくい。
時間を無駄にしている焦り
この期間が何にもならないのではないかと怖い。

どれか一つでも言葉にできると、「片思いが辛い」という大きな塊が、少しだけ小さくなります。名前がつけば、その部分にだけ手を打てます。

今夜、できること

今夜はやらないこと

  • 相手のSNSを遡る
  • 送っていない文章を、何度も書き直す
  • 「脈あり 診断」を何個もやる
  • 気持ちを伝えるかどうかを、今夜決める

今夜できること

  • いまの片思いが、三つのどれかを決める
  • 辛さの名前を、一つだけ書き出す
  • 相手の通知だけ、一晩切っておく
  • 眠る

もう少し、考えてみる

好きな人に頼られるけれど、相談の内容はほかの人との恋。そんな近さが辛いなら、好きな人から恋愛相談されるときの記事も読んでみてください。信頼される嬉しさを否定せず、聞ける範囲を決める言葉を用意しています。

職場の片思いが辛いです

職場の片思いは、毎日会うので「遠い」と「近い」を行き来します。仕事の用事で話せた日は近く感じ、話せない日は遠く感じる。仕事の会話を、脈の判断材料に数えないと決めておくと、上下が小さくなります。仕事で話すのは、相手の仕事だからです。

既婚者を好きになってしまいました

気持ちが生まれること自体は、止められません。ただ、この片思いは「近い」形に進むほど、あなたが傷つく可能性の高い形になります。相手が家庭を持っている限り、関係の名前が変わることを前提にしないでください。気持ちは持っていてもいい。行動の範囲は、自分で先に決めておく。 それだけは強くおすすめします。

脈なしだと分かっているのに、諦められません

「終わりかけの片思い」です。諦める、ではなく、待つのをやめる日を自分で決めるほうが現実的です。気持ちは、その日のあとにゆっくり小さくなります。

占いで、相手の気持ちを見てもらうべきですか

見てもらっても構いませんが、「相手の気持ち」を答えとして受け取らないでください。答えが出ると、しばらく楽になり、また分からなくなります。その往復については、復縁を、占い続けてしまうとき。に、占いを何度も聞いてしまう仕組みとして書いています。片思いでも同じ形になります。

眠れない・食べられない日が続きます

二週間以上続くなら、恋愛の問題として一人で抱えずに、誰かに話してください。厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)は、かけた場所の都道府県などの公的な相談窓口につながります(通話料がかかります)。片思いの相談でも構いません。

片思いの期間は、無駄ですか

無駄になるかどうかは、この期間をどう使ったかで決まります。自分がどんな人に惹かれ、どんな関係を望んでいるかは、片思いのあいだに一番はっきり見えます。 次の恋でも、それは残ります。

参考にした資料

  1. Whitchurch, E. R., Wilson, T. D., & Gilbert, D. T. (2011). "He loves me, he loves me not . . . ": Uncertainty can increase romantic attraction. Psychological Science, 22(2), 172-175.(大学生を対象にした実験で、実際の片思いを調べたものではありません)
  2. de Berker, A. O., Rutledge, R. B., Mathys, C., et al. (2016). Computations of uncertainty mediate acute stress responses in humans. Nature Communications, 7, 10996.(電気刺激を用いた実験で、恋愛を調べたものではありません)
  3. 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談窓口(こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556)