「相性が悪い」と言われて、いま検索している。
たぶん探しているのは、解説ではないと思います。同じことを言われて、それでも続いている人の話。「うちも最悪判定だったけど二十年目です」みたいな、誰かの書き込み。実際この検索で上に出てくるのは、十年以上前の掲示板の質問だったりします。みんな同じものを探しに来ています。
この記事では、それを用意できません。 他人の実例を並べて安心させることも、「相性は変えられます、努力次第です」と書くこともしません。もう読んだと思います。
「もっと本格的な占いなら当たります」とも書きません。私は占いを提供している側ですが、当たるとは言っていません。
扱うのは一つだけです。結果が本当かどうかではなく、結果を受け取ったあと、あなたが何をするか。
先に結論を言っておきます。いちばん気をつけたほうがいいのは、占いが当たることではありません。当たっていなくても、当たったことになってしまう経路のほうです。
たぶん、占いの前から不安はありました
順番を思い出してみてください。
何もない穏やかな日に、ふと相性を占いたくなったでしょうか。たいていは違うはずです。喧嘩のあと。結婚の話が現実になったあと。返信が前より遅くなったと感じたあと。相手の実家に行った帰り道。
つまり、不安のほうが先にあって、占いはそこに名前をつけた。「なんとなく噛み合わない気がする」という輪郭のない感じが、「相性が悪い」という短い言葉に置き換わった。
名前がつくと、輪郭がはっきりします。はっきりすると、本当らしく見えます。これは占いの精度とは関係のない作用です。
そしてもうひとつ。占いの結果は、たいてい言われ方とセットで届きます。
情報として渡される
- 「この部分は噛み合いにくいですね」
- どこがどう、という限定がついている
- 受け取る側に判断が残されている
宣告として渡される
- 「一生変わりません」
- 「やめておいたほうがいい」
- 限定がなく、行動の指示がついている
後者を浴びたなら、動揺しているのは当然です。それは相性の情報ではなく、あなたの選択肢を減らす言い方だからです。
気にしてしまう自分が情けない、という言葉をよく見ます。でも気にするのは意志の弱さではなくて、仕組みの問題です。その仕組みを先に書きます。
「当たっている」と感じることは、当たっている証拠になりません
1948年、心理学者のバートラム・フォアラーが授業でこんな実験をしました。
学生39人に性格検査を受けさせ、一週間後に「あなたの結果です」と紙を配る。ただし全員に配ったのは同じ一枚で、しかも新聞スタンドで売っていた占星術の本から集めてきた曖昧な文言でした。どれくらい当たっているかを0点から5点で評価してもらうと、平均はおよそ4.3点だったといいます。
この現象はのちに「バーナム効果」と呼ばれるようになります。名前をつけたのはフォアラー本人ではなく、ポール・ミールという別の心理学者で、1956年のことです。ちなみにバーナムは十九世紀の興行師で、心理学者ではありません。
ここで大事なのは、実験そのものより、フォアラーが論文に書いた注意のほうです。
フォアラー本人の注意
本人が「当たっている」と感じることは、その手法が正しいことの証拠にはならない
その記述が、その人を他の人と区別していないから。誰にでも当てはまる文は、誰か一人を言い当てる力を持たない。
これは「占いはウソだ」という話ではありません。「当たった感じ」を真偽の証拠として使えない、という中立な話です。当たった感じがしても外れていることがあるし、その逆もあります。
しかもこの効果は、無条件に起きるわけではありません。強くなる条件があります。
当たった感じが強まる
- 「あなたのために出した結果です」と個別に渡される
- 内容が好意的である
- 言った相手に権威がある(好意的な内容では効かず、否定的な内容のときにだけ効く)
当たった感じが弱まる
- 同じ文章が他の人にも配られていると知っている
- その分野の訓練を受けている
- 逆の結果と並べて読む
1955年のサンドバーグの研究では、大学生44人に、自分の性格検査の結果から書かれた本物の人物評と、誰にでも当てはまるように作った偽の人物評を並べて見せ、どちらが自分のものかを選ばせました。自分の本物を選べたのは44人中18人。偶然に選んだ場合と変わりませんでした。
同じ研究では、たくさんの人物評を「自分に当てはまる順」に並べ替えてもらう手続きも行っています。上位に並んだ文章には、好意的な記述が非好意的な記述の五倍ありました。下位に並んだ文章では、逆に非好意的な記述のほうが二倍多くなっていました。
つまり、「当たっている感じ」は当たり具合ではなく、書かれ方によって動くということです。
そして、この記事を読んでいる人にとって重要なのは逆向きのほうです。否定的な内容は、それらしい相手から言われるほど受け入れてしまう。 あなたが結果を飲み込んでしまったのは、あなたが素直すぎたからではありません。
バーナム効果を知ったうえで、それでも占いに何が残るのかは、占いを信じていなかった頃の話に書いています。
本当に怖いのは、当たることではありません
ここが、この記事でいちばん書きたいところです。
1948年、社会学者のロバート・マートンが「予言の自己成就」を定義しています。定義の中にこの言葉が入っています——はじめは誤っていた状況の理解が、新しい行動を呼び起こし、その行動が、誤りだったはずの理解を現実にしてしまう。
「はじめは誤っていた」。ここが要です。占いが当たったのではありません。外れていた記述が、行動を通して現実になった。
相性が悪いと言われたあと、あなたに起きうることは二種類あります。混ぜないほうがいい。
A|関係が実際に変わる
- 前なら流していた一言に、身構えるようになる
- 言いかけたことを、言わずに飲み込む回数が増える
- 相手がその変化に気づいて、距離を取る
- 相手の行動が、実際に変わる
B|見え方だけが変わる
- 同じ返信の遅さが、前は忙しさで、今は相性に見える
- 前からあった癖が、証拠として数えられ始める
- 「やっぱり」が積み上がっていく
- 相手は何も変わっていない
心理学で予言の自己成就と呼ぶのは、Aだけです。Bは確証バイアスと呼ばれ、別のものとして扱われます。分けておく意味は、対処が違うからです。
Bには検算があります。
Bの検算
もし「相性が良い」と出ていたら、いま起きたことを、同じように見ただろうか
同じ出来事に、逆向きの説明を付けられるかを試してみる。付けられるなら、それは占いの精度の話ではありません。
同じ出来事に、逆向きの説明を付けられるか試してみる。付けられるなら、それは占いの精度の話ではなく、あなたの解釈の枠の話です。確証バイアスの研究では、人は「当たった発言に注意を向け、外れた発言を割り引く」だけでなく、「本物ならこう言うだろう」とは考えても「本物でなくても同じことを言えるのでは」とは考えない、という二つの経路が指摘されています。検算は、後者を意識的に足す作業です。
Aのほうが厄介です。恋愛関係では、拒絶されることを予期しやすい人ほど、その予期にもとづいた振る舞いによって、実際に相手から拒絶的な反応を引き出してしまうことが追跡研究で確認されています。一年後に別れている割合も、明確に高かった。
ただしこの研究が追いかけたのは、もともと拒絶に敏感という「性質」を持つ人たちで、今夜はじめて悪い結果を受け取った人ではありません。占いの結果ひとつが同じ強さで働くと確かめた研究は、見当たりませんでした。これは集団の傾向であって、あなたの一年後を言い当てたものでもありません。
それでも、経路の形は同じです。予期を持つこと自体ではなく、予期にもとづいて振る舞うことが結果を作っている。だから、止められる場所があります。
相性占いを引き直すと、なぜ結果が食い違うのか
悪い結果が出たあと、いちばん自然に出てくる行動があります。
別の占いで、もう一度見てもらう。
責める気はまったくありません。私も同じことをすると思います。ただ、その先に何が起きるかは書いておきます。
結果は、たぶん食い違います。 食い違って当然の作りになっているからです。
- 西洋占星術とインド占星術では、歳差の扱いが違うため、基準がおよそ星座ひとつ分(いまは約24度)ずれます。同じ生年月日でも、たいていはどちらの体系で見るかによって別の星座になります。(星座の終わりごろの生まれだけは、変わらないこともあります。)
- 四柱推命は、日本では生まれた時刻を使わない「三柱」で見る流派が少なくありません。中国の原書では四柱すべてが前提です。蔵干の扱いも、大運の進め方も、用神を使うかどうかも、流派によって分かれます。
そして、どちらが正しいかを決める方法が、体系の外にありません。 占い同士は、互いを検証できないのです。
相性占いが当たらないと感じるのは、あなたの引き方が悪いからではありません。体系ごとに答えが割れる作りになっているからです。
だから引き直せば、良い結果も悪い結果も、いずれ両方出ます。そこで訪れるのは安心ではなく、二次的な混乱です。「どれを信じるか」という新しい問いが増えるだけになる。
もうひとつ、書いておきたいことがあります。
算命学を教えている朱学院は、相性を「性格の相性」と「運勢の相性」に分けたうえで、こう説明しています。性格と運勢の相性がどちらも良い相手は、なかなかいない。だから、どちらかが悪すぎないことが大事である。朱学院「相性」
つまり「相性に悪い部分がある」というのは、占いを疑う側から見て異常なのでもなければ、占いを教えている側から見て異常なのでもありません。全部が良い結果というものは、そもそも想定されていない。
もし「一生変わりません」「この人はやめておきなさい」と言われたのなら、それは占術の帰結ではなく、その人の言い方です。
では、結果をどう扱うか
関係についての研究で、はっきりしていることがいくつかあります。
ひとつ。 関係を「運命かどうか」で読む人と、「育てていくもの」として読む人がいて、初期に問題が起きたときの反応が正反対になります。運命として読む人は、うまくいかない兆候が出ると関係から離れる方向へ動く。育てるものとして読む人は、修復を試みる。
同じ「相性が悪い」でも、どちらの枠に入れて読むかで、その後が変わります。 結果そのものより、枠のほうが効く。
ふたつ。 1万1千組以上、43の追跡データを解析した研究では、関係の満足度を予測したのは本人が今の関係をどう感じているかでした。相手側の回答も、二人それぞれの性格も、予測にほとんど何も足しませんでした。
みっつ。 すでに続いている関係では、実際に性格が似ているかどうかは満足度を予測しません。予測するのは「似ていると感じているか」のほうです。
まとめると、こうなります。
分かっていること
相性は固定された値ではなく、認識に近いものです
そして「これから良くなるか悪くなるか」は、占いに限らず、いまの科学でもほとんど予測できていません。
当たらないのは占いだけではありません。誰にも当てられていない領域です。だからこそ、結果は判定ではなく、材料として扱うほかありません。
ここから先は、相手との間に安全が保たれていることを前提に書いています。
相手を怒らせないことを基準に一日を組み立てている。断ると罰がある。暴力や脅し、行動の監視や制限がある。そういう状況なら、この先の手順は当てはまりません。そこで疑うべきなのは、あなたの見え方ではありません。
相手が配偶者や交際相手であれば、内閣府のDV相談ナビ #8008が最寄りの配偶者暴力相談支援センターなどへつなぎます。DV相談+ 0120-279-889では電話やチャットでも相談できます。つきまといや脅しがある場合は、警察相談専用電話の#9110へ。緊急のときは110番です。受付方法は変わることがあるため、内閣府のDV相談案内で最新の情報を確認してください。
今夜、しないでおくこと
- 結果を相手にぶつけない。「私たち相性悪いんだって」から始まる会話は、たいてい占いの話にはなりません。今夜の話題としては重すぎます。
- 別の占いを引かない。今夜引くと、食い違いがひとつ増えるだけです。
- 過去の喧嘩を数え直さない。探せば必ず見つかります。相性が良いと出ていても、同じだけ見つかります。(安全にかかわることは別です。怖いと思った出来事は、数え直すのではなく、日付をつけて記録しておいてください。)
- 今夜、関係について決めない。初めに受け取った情報ほど後の判断に重く効くことが分かっています。いま決めると、その決定は結果の影の中で下されます。
明日以降にできること
-
01
検算する
昨日いらついた場面をひとつ選び、「相性が良いと出ていたら、これをどう説明しただろう」と書いてみる。
-
02
分ける
相手の行動が実際に変わったのか(A)、自分の見え方が変わっただけなのか(B)。書き出すと、どちらがどれだけあるかが見えます。Bばかりのこともあれば、Aが並ぶこともあります。Aが並ぶなら、それは占いの話ではなく、実際に起きていることです。
-
03
占いを抜いて、困りごとを書く
相性の話を一切使わずに、この関係で自分が困っていることを挙げる。占い以前から書けるものがあれば、それが本題です。
占いの結果は、別れる理由になるのか
占いの結果は、別れる理由になりません。 判定でも予言でもないからです。
ただし、別れたい理由が別にあるのなら、それは占いのせいではありません。 悪い結果は、言い出せずにいたことに口実を与えることがあります。口実は要りません。困っていることがあるなら、それを困っていることとして扱っていい。占いの後ろに隠す必要はありません。
もう少し、考えてみる
相性が悪いけど、好きです。どうすればいいですか
その二つは矛盾していません。相性の判定は関係の性質についての記述であって、あなたが誰を好きかについての記述ではないからです。好きだという事実のほうが、いまのところ確かめられている唯一のデータです。
問題になるのは、好きなまま「でも相性が悪いから」と自分にブレーキをかけ続ける状態のほうです。それは前の章のAの経路そのもので、実際に関係を変えていきます。相性を理由に迷い続けるより、「この関係で自分は何に困っているか」に問いを置き換えるほうが、答えが出ます。
占いの結果を、相手に言ってもいいですか
言ってはいけない決まりはありません。ただ、伝える前に自分に確かめておきたいことがあります。何を返してほしくて言うのか。
「気にしなくていいよ」と言ってほしいのなら、それは相性の話ではなく、安心の話です。だとしたら占いを持ち出さずに、不安そのものを言うほうが早く届きます。占いを経由すると、相手は結果への態度を表明させられることになり、話が「占いを信じるか信じないか」に逸れがちです。
伝えるなら、結果ではなく、結果を見て自分がどう感じたかのほうを渡してください。「相性が悪いって出て、けっこう動揺した」までは、相性の話ではなくあなたの話です。
相性が良いと出たのに、うまくいっていません
同じことが逆向きに起きています。良い結果を受け取ると、噛み合わない部分を「まだ本調子じゃないだけ」と割り引いて数えるようになる。良い判定は、悪い判定と同じくらい、見え方を歪めます。
だから、良い結果が出たときに安心してよくて、悪い結果が出たときに絶望すべきだ、という非対称は成り立ちません。どちらも同じ強さで、あなたの解釈に触っています。
何度占っても、悪い結果しか出ません
いくつか考えられます。ひとつは、悪い結果が出やすい聞き方をしている場合。「別れたほうがいいですか」と尋ねると、答えは二択のどちらかになります。もうひとつは、悪い結果のほうを記憶している場合。良い結果は「まあそう出るよね」で流れやすい。
そしてもうひとつ、身も蓋もない可能性として、すでに答えが出ていて、それを外から言ってほしいだけということがあります。占いに決めてもらった別れは、あとから「占いのせいで別れた」という形で残ります。決めるのがつらいのはよく分かりますが、そこは代わってもらわないほうがいい。
参考にした研究
- Forer, B. R. (1949). The fallacy of personal validation: A classroom demonstration of gullibility. Journal of Abnormal and Social Psychology, 44(1), 118-123.(1948年に実施した授業内のデモンストレーションであり、統制された実験ではありません)
- Meehl, P. E. (1956). Wanted—a good cookbook. American Psychologist, 11(6), 263-272.(「バーナム効果」の命名)
- Sundberg, N. D. (1955). The acceptability of "fake" versus "bona fide" personality test interpretations. Journal of Abnormal and Social Psychology, 50(1), 145-147.
- Merton, R. K. (1948). The self-fulfilling prophecy. The Antioch Review, 8(2), 193-210.
- Downey, G., Freitas, A. L., Michaelis, B., & Khouri, H. (1998). The self-fulfilling prophecy in close relationships: Rejection sensitivity and rejection by romantic partners. Journal of Personality and Social Psychology, 75(2), 545-560.
- Nickerson, R. S. (1998). Confirmation bias: A ubiquitous phenomenon in many guises. Review of General Psychology, 2(2), 175-220.
- Knee, C. R. (1998). Implicit theories of relationships. Personality and Social Psychology Bulletin, 24(4), 360-370.(運命信念と成長信念)
- Montoya, R. M., Horton, R. S., & Kirchner, J. (2008). Is actual similarity necessary for attraction? Journal of Social and Personal Relationships, 25(6), 889-922.(続いている関係で効くのは知覚された類似性)
- Joel, S. et al. (2020). Machine learning uncovers the most robust self-report predictors of relationship quality across 43 longitudinal couples studies. PNAS, 117(32), 19061-19071.(11,196組)
- 朱学院「相性」(算命学における相性の説明)
- 内閣府「DV相談ナビ」


