何度か会っている。次の約束もある。会えば優しいし、好意も感じる。

それでも、相手のスマートフォンにマッチングアプリの通知が見えた瞬間、心が冷たくなることがあります。

まだ、ほかの人とも話しているのだろうか。自分と会わない日には、別の誰かと会っているのだろうか。私は本命なのか、それとも候補の一人なのか。

知りたいのは人数ではなく、相手の選択が、自分との関係へ少しずつ狭まっているかなのかもしれません。

先に結論

付き合う前の同時進行は珍しくない。でも、受け入れる義務はない

排他的な交際を約束する前なら、ほかの人と話したり会ったりすること自体を裏切りとは決められません。ただし「普通かどうか」と「自分が安心して続けられるか」は別の問いです。周りの基準だけで気持ちを押し込めず、二人が今いる段階と、自分が望む関係を分けて考えます。

「同時進行」を、ひとつの言葉で考えない

同時進行と聞くと、何人もの相手を天秤にかけている姿を想像します。しかし、アプリでマッチしただけの人と、何度も会って気持ちを確かめ合っている人では、関係の重さが違います。

マッチングアプリの運営に関わる媒体でも、複数人とのメッセージやデートは珍しくないという説明が見られます。たとえばIBJが利用者へのインタビューをまとめた記事では、メッセージ段階とデート段階を分けながら、同時進行の利点と疲れやすさの両方を紹介しています。

ただし、これは全利用者の割合を示す統計ではありません。「多くの人がしているから、気にしてはいけない」という根拠にもなりません。

まず、二人が今どこにいるのかを分けて考えます。

  1. 01

    マッチ・メッセージ

    まだ互いを知る入口。複数人と話している可能性を前提にしやすい段階です。

  2. 02

    初回から数回のデート

    関心はあるものの、交際の意思までは決まっていないことがあります。

  3. 03

    継続して会い、気持ちが深まる

    ほかの人と会うことが自分の選択に影響するなら、推測ではなく話し始めたい段階です。

  4. 04

    排他的な交際を合意する

    二人だけの関係だと確認した後は、アプリやほかの相手をどうするかも合意に沿わせます。

大切なのは「3回会ったら自動的に一人へ絞る」といった暗黙の期限ではありません。片方だけが交際のつもりにならないよう、関係が深まるほど言葉で確かめることです。

何度も会っているのに交際の言葉がない場合は、「何回デートしても告白されない男性心理」で、デート回数ではなく、関係が進んでいる5つの行動を確認できます。

選択肢が多いほど、よい人を選べるとは限らない

アプリには、今話している相手の向こう側にも、次の候補が続いているように見える仕組みがあります。

選択肢が多いことは出会いの可能性を広げます。その一方で、目の前の一人を知る前に「もっと合う人がいるかもしれない」と次へ進みやすくもなります。

オンライン上の相手選びを調べた三つの研究では、提示される候補が増えるにつれて、参加者が相手を拒否しやすくなる傾向が確認されました。最初と最後の候補を比べると、受け入れる確率は平均27%低下していました。

ただし、対象は18〜30歳の独身・異性愛者で、写真を選ぶ課題が中心です。この結果だけで、目の前の相手があなたを「キープしている」とは判断できません。分かるのは、選択肢の多さが、人を丁寧に選ぶことを必ずしも助けないということです。

別のオンラインデートの選択実験でも、24人から一人を選んだ参加者は、6人から選んだ参加者より一週間後の満足度が低く、選択を変えやすいという結果でした。これも実際の交際を追った研究ではありませんが、「比較を続ければ確信が強くなる」とは限らないことを示します。

本命になることは、大勢の中で最高得点を取ることではありません。比較を続ける状態から離れ、不完全な一人を、もっと知ろうとする時間が始まることです。

苦しさに、名前をつけてみる

「ほかの人とも会っていたら嫌」という気持ちの内側には、異なる痛みがあります。

比較される不安
自分より魅力的な人が現れたら、簡単に入れ替えられる気がする。
代替可能になる怖さ
私でなくてもよく、候補の枠を埋めているだけのように感じる。
温度差への寂しさ
自分は一人に絞り始めているのに、相手はまだ探しているように見える。
公平さへの違和感
恋人のような距離を求められる一方で、相手だけが選択肢を残している気がする。
境界線の迷い
どこまで聞いてよいのか、重いと思われないかが分からない。
選ばれない痛み
相手の判断が、自分の容姿や人としての価値の採点に思えてしまう。

どの言葉が一番近いでしょうか。

比較されることが怖いなら、競争に勝つ方法より、自分が安心できる関係の条件を考える必要があります。温度差が寂しいなら、相手の本音を読み続けるより、自分は一人と向き合いたい段階に来たと伝える方が現実へ近づきます。

気持ちに名前がつくと、「ほかに何人いるの?」という問いの奥にある、本当に確かめたいことが見えてきます。

本命かどうかは、選択を狭める7つの行動に現れる

相手の本音を直接見ることはできません。見られるのは、二人の関係へ時間と注意を向ける行動です。

  1. 01

    会う予定を、具体的に確保する

    空いた時間に呼ぶだけでなく、互いの予定を調整して次の時間をつくる。難しいときには代案を出します。

  2. 02

    相手からも、関係を動かす

    連絡、質問、誘いが片方だけにならない。あなたが止まっても、相手から接点が生まれます。

  3. 03

    会話が、一回ごとに積み上がる

    前に話したことを覚え、続きを聞く。プロフィールにある条件ではなく、あなた固有の日常へ関心を向けます。

  4. 04

    よく見せるだけの関係から進む

    楽しい話だけでなく、苦手なことや忙しい時期も少しずつ共有する。現実の生活が見えてきます。

  5. 05

    未来の話が、具体性を持つ

    「いつか」ではなく、来月の予定や休日の過ごし方、恋愛や結婚への考えを話せるようになります。

  6. 06

    関係について聞いても、逃げない

    すぐ結論が出なくても、冗談で流したり怒ったりせず、現在の気持ちと迷いを言葉にしようとします。

  7. 07

    合意した境界線を、行動で守る

    一人と交際すると決めた後は、アプリの利用やほかの相手との連絡を、二人で決めた内容に合わせます。

返信が速い。毎日「かわいい」と言う。会えば身体を求める。これらは好意の一部かもしれませんが、それだけでは選択が狭まっているとは言えません。

親密さを育てるうえでは、相手の言葉を理解し、受け止め、大切に扱う「応答性」が重要だとする研究レビューがあります。本命かどうかを派手な愛情表現で採点するより、あなたの気持ちを伝えたときの応答を見る方が、関係の質を考える手がかりになります。

あなた自身も、相手を選んでいる

「私は本命?」と考えている間、選ぶ権利が相手にだけあるように感じてしまいます。

けれど、あなたも相手を選んでいます。

安心

好かれるために、自分の不安や希望を隠し続けなくてよいか。

尊重

断ることや、ゆっくり進みたい気持ちを大切にしてもらえるか。

現実

言葉だけでなく、約束・時間・態度に一貫性があるか。

選択

競争に勝ちたいからではなく、この人をもっと知りたいと思えるか。

相手がほかの人を選ぶ可能性と同じように、あなたが「この曖昧さは自分には合わない」と選ぶ可能性もあります。

聞くなら、人数を詰問するより、自分の現在地を伝える

答えを知れば傷つくかもしれない。重いと思われるかもしれない。そう考えて、何も聞けないまま恋人のような関係を続けることがあります。

でも、自分の選択に必要な情報を確かめることは、相手を縛ることではありません。

関係の現在地を確かめる言い方

相手を責めず、自分が望む段階を言葉にする

「何度か会って、私はもう少し一人の人と向き合ってみたいと思ってる。○○さんは今、ほかの人とも会いながら考えている段階かな。正直に教えてもらえると、私もこれからを考えやすい」

短く送るなら「何度か会えて楽しい。私はそろそろ一人の人と向き合いたいなと思ってる。○○さんは今、どんな感じ?」

これは「今すぐ私を選んで」という命令ではありません。自分の気持ちと判断に必要なことを伝え、相手にも現在地を話してもらうための問いです。

聞くタイミングに、全員共通の正解はありません。ただし次のような段階では、曖昧なまま進むより確認する意味があります。

返事の内容より、その後に二人で何を決められるか

「自分も一人と向き合いたい」

言葉だけで安心を完成させず、交際の意味、アプリ、ほかの相手との連絡をどうするか具体的に話します。

「まだほかの人とも会いたい」

正直な答えではあります。待つか離れるかを、相手の都合ではなく自分が耐えられる期間と境界線から選びます。

「分からないけれど、あなたを知りたい」

すぐ決められないこと自体より、次に会う予定や話し合う時期を二人で具体化できるかを見ます。

話をそらす・怒る・責め返す

答えが何か以前に、あなたが大切なことを安全に話せる相手かという情報になります。

価値観が違うことと、誰かが悪いことは同じではありません。

同時進行をしながらゆっくり考えたい人もいます。一人ずつ向き合いたい人もいます。どちらが正しいかではなく、二人の進み方が合うかを確かめます。

「本命に選ばれる」から、「二人で選ぶ」へ

本命かどうかを知りたい夜、心の中には見えない順位表ができます。

相手は誰と会ったのか。自分より美しい人か。会話が上手な人か。何番目に返信したのか。

けれど、恋愛は一度の審査で決まる順位ではありません。

一人を知るために時間を使う。聞きにくいことにも向き合う。互いの希望が違えば調整する。約束したことを守る。

そうして、選択肢が無限に続く画面から顔を上げ、目の前の一人との現実をつくり始める。二人の行動が重なるたび、関係は少しずつ「候補」から「選択」へ変わっていきます。

選ばれるために自分を削るのではなく、自分も安心して選べる関係かを見てください。

もう少し、考えてみる

マッチングアプリで付き合う前に複数人と会うのは、浮気ですか?

排他的な交際を約束する前であれば、複数人と会うことだけで浮気とは決められません。ただし、交際していると思わせる発言をしながら隠れて同時進行するなど、相手の判断に必要な情報を意図的に隠す行動は信頼に関わります。

何回目のデートで、ほかの人とも会っているか聞いていいですか?

回数だけで決める必要はありません。自分が一人に絞りたいと思い、答えによって会い続けるかが変わる段階なら確認して構いません。

自分も同時進行した方が、有利ですか?

有利かどうかだけで決める必要はありません。複数人と会うことで落ち着いて判断できる人もいれば、比較によって疲れたり相手を知る時間が薄くなったりする人もいます。誠実に向き合える人数へ絞りましょう。

付き合う前に、マッチングアプリを消してほしいと頼んでもいいですか?

一方的に削除を求めるより、まず二人が交際や排他性をどう考えているかを話しましょう。関係の合意ができた後に、アプリとほかの相手とのやり取りをどうするか具体的に決める方が、削除だけを確認するより信頼につながります。

参考にした研究・資料

  1. IBJマッチングアプリ研究室(2024)「マッチングアプリは複数人同時進行が基本?並行すべき人数と注意点」
  2. Pronk, T. M. & Denissen, J. J. A. (2020). A Rejection Mind-Set: Choice Overload in Online Dating. Social Psychological and Personality Science, 11(3), 388–396.
  3. D'Angelo, J. D. & Toma, C. L. (2017). There Are Plenty of Fish in the Sea: The Effects of Choice Overload and Reversibility on Online Daters' Satisfaction With Selected Partners. Media Psychology, 20(1), 1–27.
  4. Arican-Dinc, B. & Gable, S. L. (2023). Responsiveness in romantic partners' interactions. Current Opinion in Psychology, 53, 101652.