先に、いちばん大事なことを書きます。
川崎市岡本太郎美術館は、2026年3月30日から2029年3月末(予定)まで、改修工事のため展示室での展覧会を休止しています。
「代表作がずらりと並ぶ」と紹介している記事は、いまも検索すればいくつも出てきます。ただ、それらは改修が始まる前に書かれたものです。いま同じつもりで向かうと、目当てのものは見られません。
それでも、この記事を「行くのはやめましょう」で終わらせるつもりはありません。閉まっているのは展示室であって、この場所そのものではないからです。
Current Status
展示室/2026年3月30日〜2029年3月末(予定)まで休止。
館内の無料スペース/ミニ展示「ちょこっとTARO」を開催中。観覧無料。
母の塔/屋外に立っているため、これまでどおり見られます。
出張展示/館外の会場で継続。
それでも、いちばん大きな作品は立っています
生田緑地の木立のあいだに、白い塔が突き出ています。これが《母の塔》です。
美術館のシンボルであると同時に、生田緑地全体のランドマークでもあります。建物の中ではなく屋外に立っているので、展示室が閉まっているいまも、変わらずそこにあります。
高さ30メートル、表面は真珠色
高さは30メートル。鉄骨造で、塔の本体はパイプトラスと鋳鋼のジョイントで組まれています。
表面は「タローホワイト」と呼ばれる真珠色のクラッシュタイルで仕上げられていて、光の当たり方で表情が変わります。そして塔の各所に、高さ3.0〜5.6メートルの人形彫刻が16体取り付けられています。遠目には白い一本の塔に見えますが、近づくとかなり賑やかです。
原型が制作されたのは1971年。実際にこの場所に建ったのは、美術館が開館した1999年です。ジャッキアップ工法で少しずつ持ち上げていく方法が採られ、6回に分けて立ち上げられました。
太陽の塔とは、何が違うのか
岡本太郎の塔といえば、多くの人がまず思い浮かべるのは大阪・万博記念公園の《太陽の塔》だと思います。
いちばん分かりやすい違いは大きさです。太陽の塔がおよそ70メートルなのに対して、母の塔は30メートル。半分以下です。
ただ、並べて優劣を言う話ではないと思っています。込められているものが違います。
母の塔について、美術館は三つのイメージを挙げています。大地に深く根ざした巨木のたくましさ。ゆたかでふくよかな母のやさしさ。そして、天空に向かって燃えさかる永遠の生命。
太陽の塔が万国博覧会という祝祭の中心で、正面から人と向き合う塔だったとすれば、こちらは森のなかに立って、上へ伸びていく塔です。同じ作者の塔でも、置かれている場所も、担っている役割も違います。
なぜ、川崎なのか
岡本太郎の作品がなぜ川崎にまとまってあるのか。ここには理由があります。
太郎の母である岡本かの子は文学者で、多摩川流域に生まれ、生涯この川を愛した人でした。そして太郎自身も、母の実家であるこの地で生まれています。
1964年、太郎は多摩川の河畔に、母をたたえる文学碑《誇り》を建てています。そして《母の塔》は、その碑と向かい合うように設計されました。
「母の塔」という名前は、抽象的な母性の話だけではありません。この土地と、この川と、実在した一人の母に結びついています。それを知ってから見上げると、少し見え方が変わると思います。
館内では「ちょこっとTARO」が無料で見られます
展示室は閉まっていますが、館内の無料スペースを使ったミニ展示が続いています。
現在開催中のものは、彫刻作品を集めた回です。会期は2026年7月18日から12月6日まで、観覧は無料。動物や日用品をかたどった立体作品がおよそ40点並び、なかには触れたり、写真を撮ったりできる家具の作品もあります。
2026年度は全3回の開催が予定されています。日曜日には学芸員によるトークも行われています。
規模は小さいです。ただ、無料で本物の立体作品に近づける機会は、そう多くありません。
沖縄の作品は、いま別の場所にあります
改修期間中も、館の外で展示は続いています。
「令和8年度出張展示 Part.2 岡本太郎と沖縄 in Museum⁺205」が、2026年9月18日から11月8日まで開催されます。岡本太郎にとって沖縄は、思想の転回点になった土地です。会場や観覧方法は美術館の公式サイトで確認してください。
行き方と、かかる時間
Access
開館時間/9:30〜17:00(入館は16:30まで)
休館日/月曜(祝日の場合を除く)、祝日の翌日(土日を除く)、年末年始
電車/小田急線・向ヶ丘遊園駅の南口から徒歩約17分。JR南武線・小田急線の登戸駅からは徒歩約30分
バス/向ヶ丘遊園駅南口から乗車3分、「生田緑地入口」で下車して徒歩8分
駐車場/生田緑地の東口(美術館まで7〜8分)と西口(階段を下りて3分)。1時間まで300円、以降30分ごと150円。平日は1日1,000円が上限
注意が一つあります。生田緑地の中は、原則として車両が通行できません。 駐車場に停めてから歩くことになるので、時間に余裕を見てください。足が不自由な方の送迎のみ、事前連絡のうえで乗り入れができます。
美術館だけを目的にするなら、いまは1時間もかかりません。ミニ展示と母の塔を見て、森を少し歩く。そのくらいの想定でいいと思います。
生田緑地には、他にもあります
美術館が目的だった人にとっては物足りないかもしれません。ただ、この緑地は美術館だけの場所ではありません。
In The Park
川崎市立日本民家園/各地の古民家を移築した野外博物館。一般550円、高校・大学生と65歳以上は330円
かわさき宙と緑の科学館/プラネタリウム観覧400円(高校・大学生200円)
枡形山展望台/無料。9:00〜17:00
客車(ブルートレイン)・D51蒸気機関車/いずれも無料
生田緑地ばら苑/季節開苑のため、現在は閉苑中
日本民家園はかなり広く、それだけで数時間かかります。展示室が閉まっているいまは、むしろこちらを主目的にして、母の塔を途中で見上げるくらいの組み方が現実的かもしれません。
料金や開館状況は変わることがあります。行く前に各施設の公式サイトで確認してください。
もう少し、考えてみる
2029年まで待ったほうがいいですか
代表作をまとめて見たいのなら、待つ意味はあります。三年は長いですが、改修後にまた並びます。
ただ、母の塔は待っても同じものです。むしろ人が少ないいまのほうが、静かに見上げられるとは言えます。目的次第だと思います。
母の塔だけなら、お金はかかりませんか
かかりません。屋外に立っているので、生田緑地を歩いていれば見られます。館内のミニ展示も無料です。駐車場を使う場合の料金だけ見ておいてください。
子どもと一緒でも楽しめますか
ミニ展示には触れる作品や撮影できる作品があります。緑地には蒸気機関車もブルートレインもあり、どちらも無料です。プラネタリウムもあります。
美術館の展示室が閉まっていることは、子ども連れにとってはさほど痛手ではないかもしれません。
岡本太郎の作品は、他ではどこで見られますか
大阪・万博記念公園の《太陽の塔》、渋谷駅の《明日の神話》、東京・青山の岡本太郎記念館などがあります。川崎が休室しているあいだは、そちらへ足を運ぶという選び方もあります。
参考資料
この記事の情報は2026年9月7日時点のものです。会期や料金は変わることがあるため、出かける前に公式サイトで最新の情報を確認してください。


